ロシア語舊正書法とは
1918年の正書法改革以前の正書法。ロシア語では дорефо́рменная орфогра́фия(改革前正書法)、または дореволюцио́нная орфогра́фия (革命前正書法)と呼びます。1708年のピョートル1世による世俗文字導入に始まり、近代ロシア語の確立とともに徐々に慣習として形成されました。法的な統一基準はつくられなかったものの、19世紀末にはほぼ安定してゐました。
讀み方
舊正書法には現行のアルファベットより4つ多くの字母がありました。
楷體 | 斜體 | 字母名 |
І і | І і | і |
Ѣ ѣ | Ѣ ѣ | ять |
Ѳ ѳ | Ѳ ѳ | ѳита́ |
Ѵ ѵ | Ѵ ѵ | и́жица |
(и は и́же と呼ばれた。また數字としての値から и восьмери́чное, і десятери́чное(8のイ、10のイ)ともいふ。)
これらの發音は、і は и, ѣ は е, ѳ は ф, ѵ は и(ごくまれに в)と同じです。同じ音を語源や文法規則に從って書き分けねばなりませんでした。したがって讀むのは簡單ですが、書くのには一定の慣れが必要です。だからこそ識字率向上の妨げとして正書法改革で廢止されたわけです。
また硬子音で終はる語の末尾には硬音符號 ъ が書かれました。つまり單語は必ず母音か ъ か ь か й で終はってゐました。この硬音符號は默字で、發音しません。キリル文字が作られた時代のスラヴ語では全ての音節が母音で終はってをり、ъ ь は弱母音として發音されてゐました。12世紀頃から弱母音が消滅し始め、現在の樣な子音連續と閉音節だらけのスラヴ語に變化していきますが、語末に必ず母音字が來るといふ綴りの慣習は殘ったため、この樣な默字が發生しました。
廢字の書き方
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І で書くもの
- 母音および半母音 й の前。іе, іи, ій, ію, ія の樣になります。(убійца 殺人者)
- ただし複合語の前部が и で終はり、後部がたまたま母音で始まるときは и のままです(пятиарши́нный 5アルシンの, ниотку́да どこからも)。
- 「世界」「農村共同體」は міръ と綴り、「平和」の миръ と區別します。(語源は同じといふ説と異なるといふ説がありますが、いづれにせよ教會スラヴ語/古東スラヴ語の時點ではどちらも миръ であり、書き分けるのは後世になってからの慣習です。)
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Ѣ で書くもの — 名詞類
- 名詞單數前置格・與格の語尾は -ѣ です(о столѣ́, въ/къ шко́лѣ)。但し不變化の名詞には適用しません(ко́фе の前置格は о ко́фе)。
- 人稱代名詞前置格・與格の3語。мнѣ, тебѣ, себѣ
- 代名詞造格の4語。кѣмъ, чѣмъ, тѣмъ, всѣмъ
- 代名詞複數の2語とその斜格。тѣ, всѣ (生前 тѣхъ, 與 тѣмъ, 造 тѣ́ми; 生前 всѣхъ, 與 всѣмъ, 造 всѣ́ми)
- 女性兩數の2語とその斜格。двѣ, обѣ (生前 обѣ́ихъ, 與 обѣ́имъ, 造 обѣ́ими)
- двѣ の派生語は ѣ になります。двѣ́сти, двѣна́дцатый
- 女性複數の2語とその斜格。онѣ́, однѣ́ (生前 однѣ́хъ, 與 однѣ́мъ, 造 однѣ́ми) 現正書法では они́, одни́ に統合されてゐます。現代のロシア語で複數には性の區別が全くありませんが、舊正書法の時代には區別が必要でした。
- 比較級と最上級の語尾(быстрѣ́е, быстрѣ́йшій)。ただし不規則比較級は -е, -ше(ле́гче, ста́рше)。
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Ѣ で書くもの — 動詞類
- ほぼ全ての -еть に終はる動詞の語幹最後の е は ѣ で綴ります。(умѣ́ть, 現單3 умѣ́етъ, 過男 умѣ́лъ)
- 唯一の例外は -ереть に終はる場合で、е で綴ります。(умере́ть, запере́ть)
- 動名詞は元の動詞が -ѣть である場合は -ѣніе, それ以外の場合は -еніе と綴ります。(потемнѣ́ть — потемнѣ́ніе 黑ずみ, но затемни́ть — затемне́ніе 曖昧にすること)
- この區別は時として恣意的に見えることがあります。例へば мнѣ́ніе 意見 や сомнѣ́ніе 疑惑 は一見 мнить (= мы́слить) 由來に見えますが、正しくは教會スラヴ語の мнѣти からなので ѣ で書きます。しかし усомне́ніе 疑惑 はロシア語 усомни́ться の動名詞として е で書きます。
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Ѣ で書くもの — その他
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Ѳ で書くもの
- ギリシャ語の θ に由來し、ф で讀まれるもの。西歐諸語の th に對應します。орѳогра́фія 正書法, мараѳо́нъ マラソン, Ѳёдоръ フョードル(< Θεόδωρος テオドロス)
- 一部は西歐諸語の影響で十九世紀までに т に置き換へられました。теа́тр 劇場
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Ѵ で書くもの
- この字はギリシャ語の υ を表す文字ですが、改革前からすでにほとんど使はれてをらず、и または(а е э の前で)в と書き、讀むのが普通でした。
- 一般に用ゐるのは мѵ́ро 聖油 と сѵно́дъ 聖シノド 位です。ほか教會用語や、宗教的意味を強調する際に ѵ で綴ることがありました。си́мволъ シンボル に對し сѵ́мволъ 教義要解、信條 など。
- 教會スラヴ語を世俗文字で印刷する際にはギリシャ語の υ 由來のすべてが ѵ で綴られました。
新字の書き方
Й と Ё は元々アルファベットの正式な一員ではありませんでした。Й が字母として公式に追加されたのは改革後の1934年、Ё が追加されたのは1942年ですが、任意の表記方法としては十八世紀から存在してゐました(ただし字上符はしばしば省略されました)。そこで硬口蓋音(ж ч ш щ)の後にくる о/ё をどちらで書くかの問題が生じ、正書法改革後まで統一基準は生まれませんでした。當時の慣習には現代と異なるものが若干あります。
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常に о と書かれたもの
- 二重母音 ой
- 指小辭 -ок (сверчо́къ 蟋蟀, пушо́къ 絨毛, кружо́къ サークル)
- 人の姓 (Балашо́въ, Борщо́въ, Чижо́въ)
- 造格 (ножо́мъ, палашо́мъ, плечо́мъ, душо́ю, свѣчо́ю)
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その他の慣例
- ещё なほ, чортъ 惡魔, вечо́ръ 昨晩, самъ-шостъ 收穫量が6倍, душо́нка 性根, шовъ 縫合, жена́ の複數主格 жо́ны (單數生格 жены́ と區別する)
形態論
- 廢字に關聯する事項は既述の通りです。
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ъ についての補足
- ч と щ は音聲上は恆軟子音ですが、この2音に終はる語で ь がつかないもの(その範圍は現行正書法と同じ)には硬子音の場合と同じく ъ がつきました(врачъ 醫者、това́рищъ 同志。なほ弱母音が脱落する前の古東スラヴ語では врачь, товарищь)。
- ハイフンの前も語末に含まれます。(изъ-за 所為で, ко̀нтръ-адмира́лъ 海軍少將, такъ-съ さやうでございます)ただしこれは外國の固有名詞では嚴密に守られない場合もありました。(Абд-ул-азизъ アブドゥルアズィーズ)
- 子音で終はる接頭辭に а, э が續くとき、軟母音字が續くときと同樣に ъ が書かれました。(двухъарши́нный 2アルシンの、отъэкзаменова́ть 試驗を受け終はる; 現 двухарши́нный, отэкзаменова́ть)
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形容詞男性・中性生格 -аго, -яго
- 語幹にアクセントのある形容詞 -ый, -ій では生格を -аго, -яго と綴りました。(ка́ждаго, си́няго, бы́вшаго, го́рькаго, са́маго (< са́мый))
- 語尾にアクセントのある形容詞 -ой, および代名詞の生格は今と同じ -ого です。(земляно́го, э́того, самого́ (< самъ))
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形容詞中性・女性複數主格 -ыя, -ія
- 複數主格(およびそれと同じ對格)にも性による區別があり、男性は -ые, -іе, 中性と女性は -ыя, -ія でした。
- 形容詞や代名詞を一致させるため、複數しかない名詞にも性がきちんと決まってゐました。лю́ди は男性、дѣ́ти は中性です。бу́дни 平日 は бу́дни дни に由來するので男性、очки́ 眼鏡 は о́ко 目 に由來するので中性といった樣に語源が參照されました。語源が自明でないものは生格の語尾で判斷しました。(штаны́, штано́въ ズボン(男); брю́ки, брюкъ ズボン(女))
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複數語からなる名詞句に對する代名詞・形容詞の一致
- 現在では複數に性の區別は一切ありませんが、舊正書法では они́/онѣ́, одни́/однѣ́(以上は男中/女), 形容詞の -ые/-ыя, -іе/ія(以上は男/中女)を區別してゐました。このため複數を意味する名詞句が異なる性の混成である場合、それを受ける代名詞や形容詞がどの形を使ふかの問題が存在しました。
- 代名詞は男性が含まれるか、もしくは中性だけの場合 они́, одни́ を使ひ、女性だけか中・女混合の場合は онѣ́, однѣ́ を使ひました。
- 形容詞は男性が含まれる場合男性形を、それ以外の場合非男性形を使ふのが建前上の決まりでした。ただし形容詞についてはこれを守らず、文中で最も近い被修飾語に一致してしまふ傾向がありました。(ры́жіе мужчи́ны и же́нщины; ры́жія же́нщины и мужчи́ны; взро́слые и дѣ́ти, бога́тыя и бѣ́дныя; бога́тые и бѣ́дные, взро́слые и дѣ́ти.)

(青が男性、黄が女性、赤が中性)
- весь の女性生格には всей の他に古めかしい形として всея́ がありました。Госуда́рь, Царь и Вели́кій Князь всея́ Руси́(全ルーシの君主、ツァーリにして大公)など君主や聖職者の稱號で使はれました。
- 現在 её と書かれる語は、代名詞生格と所有形容詞では ея (нея), 代名詞對格では今と同じ её (неё) でした。
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接頭辭末の з は無聲化するときも с にせず、語源を守って綴りました。из-, воз-, раз- (роз-), низ-, без-, через- (чрез-)
- 例:разска́зъ 物語, разсужда́ть 論ずる, возсоедини́ть 再結合する, изслѣ́довать 搜査する, безполе́зный 無益な, черезчу́ръ 過度に
- 但し語源意識の無い場合 встрѣча (< въз-рѣт-я) の樣に發音に寄せて書く語もありました。
- 第二生格を持つ單語は、數量生格のとき必ず第二生格の方を使ひました。(これは改革後も變はらず、1956年正書法で任意となりました。)
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搖れのあったもの
- 造格の -ью は -ію と綴ることがありました。
- -ье に終はる中性名詞の前置格 -ьѣ は -ьи と綴ることがありました。(о сча́стьѣ ~ о сча́стьи)
- что は代名詞のときしばしば <что́> と力點を打ち、力點のない接續詞 <что> との違ひを明示しました。
外來語の表記
- 借用元の二重子音を保つ傾向がありました。(галлере́я, аппартаме́нты, корридо́ръ)
- іе /йэ~ийэ/ Іего́ва エホバ, Іерусали́мъ エルサレム, /йэ/ іе́на 日本圓 (現在の發音も /йэ́на/)
- іо /йо/ іотъ, маіо́ръ, раіо́нъ(現在は и でなく й で綴る)
- іу /йу/ Іуди́ѳь ユディト, Іуліа́нъ ユリアヌス(現在は Ю で綴る), /иу/ Іу́да ユダ(現 Иу́да)
句讀法
- 頭字語には句點が必須でした。М. В. Д. 内務省, С. С. С. Р. 蘇聯, С.‑А. С. Ш. 米國(Северо-Америка́нские Соединённые Шта́ты)。これは1935年に廢止されました。
- 記事などの見出しの最後にも句點が必須でした。1932—3年に廢止されました。
- 對比の — の前には句點が必須でした。
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帝室に關する語は頭文字を大文字にしました。Госуда́рь Импера́торъ 君主にして皇帝、Меда́ль въ па́мять коронова́нія Ихъ Импера́торскихъ Вели́чествъ 皇帝陛下戴冠記念メダル、Ва́ше Импера́торское Вели́чество 陛下(二人稱)
- 公文書ではしばしば代名詞も含め皇帝を指す語を全字スモールキャピタルで表記しました。
- 教會に關する語の頭文字は世俗文書では通常小文字のままでした。
語根に ѣ を持つ自立語
語彙の規則と逆規則
規則:Ѣ で書くものは
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ポーランド語で ia, クロアチア語(イェ方言)で je~ije, ウクライナ語で і に概ね對應します。
- вѣ́ра 信仰(ポ wiara, クロ vjȅra, ウク ві́ра); мѣ́сто 場所(ポ miasto, クロ mjȅsto, ウク мі́сто)
- ただしウクライナ語では一部の е も і になってゐます。кліщ (клещъ), піч (печь), крі́сло (кре́сло)
- スラヴ祖語に遡らない ѣ はこの限りではありません。врѣ́мя 時(祖語 *vermę̀; 古ポ wrzemię(現代語では czas), クロ vrijéme, ウク вре́м’я)
- 字母名のうち。В вѣ́ди, Ж живѣ́те, Х хѣръ; ただし М мы́слете
逆規則:原則として Ѣ が現れないところは
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硬口蓋音 жчшщ, 軟口蓋音 гкх および ф の後。
- 例外は字母名 хѣръ とポーランド語の固有名詞。
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語根内部の子音連續の前。
- 派生による子音連續には現れることがあります。вѣ́рный 誠實な, чрезмѣ́рный 過度の(それぞれ語根は вѣр, мѣр)
- ウクライナ語・ポーランド語でも e に對應してゐるもの。
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母音重插の -еле-, -ере-。
- 母音重插でない例外は желѣ́зо 鐵 と、モンゴル語からの借用 телѣ́га 荷車 の2語。
- -чь に終はる動詞は бѣчь 走る, сѣчь 切る の2語を除き е で綴ります。
-
-ель に終はる名詞。
- 例外は цѣль 目的, апрѣ́ль 四月, свирѣ́ль 笛 の3語。свирѣ́ль は古語の動詞 *свирѣти(教會スラヴ語 свирати, 露語 свистѣть)に由來するので ѣ らしい。
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-ей- による派生名詞。коре́ецъ 高麗人
- 例外は индѣ́ецъ インディアン(индѣ́йскій; なほ инди́ецъ はインド人)、змѣй 龍、копѣ́йка コペイカ の3語。
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近代になってからの外來語。
- Вѣна ウィーン は ѣ が音韻と觀念されてゐた時代のものでこれに該當しません。
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ё 化しうる語根。
- 但しこれは例外が多いです。вдѣжка, гнѣзда, запечатлѣнъ, засѣкъ, звѣзды, зѣвывалъ, издѣвка, надѣванъ, надѣвывалъ, неумѣха, обрѣлъ, смѣтка, сѣдла, подгнѣта, цвѣлъ
- 現在は ё 化しないもの:вѣшка, медвѣдка。
- これらの例外を ё と同じ樣に ѣ̈ と書かう(例:звѣ̈здочка)という提案もありましたが數が少ないためか定着しませんでした。
- 出沒母音は必ず е です。
- ЕН, ЕР, ЕС 活用をする名詞の語尾。и́мени 名, ма́тери 母, небеса́ 空(それぞれ и́мя, мать, не́бо の複數形)
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接辭 -ец-。
- москворѣ́цкій モスクワ川の などは語根 рѣк によるので該當しません。
固有語根一覽
ここに記載してゐる語根・例語と語源が同じ單語は同じく Ѣ で綴るのを基本とします。同源であるか否かが明白でないものは例語に載せる樣努めました。Ѣ で綴らないもののうち特に注意すべきものは (! ...) 内に記しました。
語頭 | (2語根) |
ѢД- | ѣсть 食べる, ѣда́ 食事, обѣ́дъ 晝食, медвѣ́дь 熊 |
ѢЗД- | ѣ́хать, ѣ́здить 乘物で行く, по́ѣздъ 汽車 |
Б | (5語根) |
БЛѢД- | блѣ́дный 青白い |
БѢГ- | бѣгъ 競争, бѣжа́ть, бѣ́гать 走る |
БѢД- | бѣда́ 慘事, убѣди́ть 説得する, побѣ́да 勝利 |
БѢЛ- | бѣ́лый 白い, бѣльё 下着, бѣлу́га チョウザメ |
БѢС- | бѣсъ 惡魔 |
В | (11語根) |
ВѢ- | вѣ́ять 吹く, вѣтвь 枝, вѣ́теръ 風, вѣ́никъ 箒 |
ВѢД- | по́вѣсть 物語, вѣ́жливый 慇懃, невѣ́жда 無學者, вѣ́жда 瞼, вѣдь といふのも, вѣ́дѣніе 管轄、知識, невѣста (< неизвѣстный からとされる), свидѣ́тель 證人 (! вести́, веду́ 率ゐる, веде́ніе 經營、遂行) |
ВѢЖ- | вѣ́жа 天幕 |
ВѢК- 1 | вѣкъ 世紀, увѣ́чье 癈疾, человѣ́къ 人 |
ВѢК- 2 | вѣ́ко まぶた |
ВѢН- 1 | вѣно́къ, вѣне́цъ 花輪 |
ВѢН- 2 | вѣ́но 結納金 (ср. Вѣ́на ヴィーン, ! ве́на 靜脈) |
ВѢР- | вѣ́ра 信仰, вѣроя́тно 多分 |
ВѢС- | вѣсъ 重さ |
ВѢТ- | обѣ́тъ 誓約, обѣща́ть 誓ふ, отвѣ́тъ 返答, привѣ́тъ 挨拶, совѣ́тъ 助言 |
ВѢХ- | вѣ́ха 里程標 |
Г | (5語根) |
ГНѢВ- | гнѣвъ 怒り |
ГНѢД- | гнѣдо́й 栗毛の |
ГНѢЗД- | гнѣздо́ 巢 |
ГНѢТ- | загнѣ́та かまどの部位(! гнётъ 壓政) |
ГРѢХ- | грѣхъ 罪 |
Д | (5語根) |
ДѢ- | дѣть 置く, дѣ́ло 物事, дѣ́лать する, недѣ́ля 週, надѣ́яться 期する (! наде́жда 希望) |
ДѢВ- | дѣ́ва 乙女 |
ДѢД- | дѣдъ 翁 |
ДѢЛ- | дѣли́ть 分ける, богадѣ́льня 殘廢收容所 (< бога дѣля «бо́га ра́ди» < дѣля «для» < дѣлити) |
ДѢТ- | дѣ́ти 子供 |
Ж | (1語根) |
ЖЕЛѢЗ- | желѣзо 鐵 |
З | (7語根) |
ЗВѢЗД- | звѣзда́ 星 |
ЗВѢР- | звѣрь 獸 |
ЗМѢЙ- | змѣя́ 蛇, змѣй 龍 |
ЗРѢ- | зрѣть 熟す, зрѣ́лый 熟した |
ЗѢВ- | зѣва́ть あくびをする |
ЗѢМ- | зѣмля́ 地 |
ЗѢН- | зѣни́ца 瞳 |
К | (4語根) |
КАЛѢК- | калѣ́ка 片輪 |
КЛѢТ- | клѣть, клѣ́тка 檻、かご |
КОЛѢН- | колѣ́но 膝 |
КРѢП- | крѣ́пкий 丈夫な |
Л | (9語根) |
ЛѢВ- | лѣ́вый 左 |
ЛЕЛѢ- | лелѣ́ять かはいがる |
ЛѢЗ- | лѣзть よぢ登る, лѣ́стница 階段 |
ЛѢК- | лѣ́карь 醫者, лѣчи́ть 癒やす |
ЛѢНЬ- | лѣнь 怠惰 |
ЛѢП- | лѣ́пый 優美な |
ЛѢС- | лѣсъ 森, лѣ́ший 森の精靈 |
ЛѢТ- | лѣ́то 夏 |
ЛѢХ- | лѣха́ 畝間 (леха́ とも) |
М | (10語根) |
МЛѢ- | млѣть 氣を緩める (! мле́ко 乳) |
МѢД- | мѣдь 銅 |
МѢЛ- | мѣлъ 白堊 (! ме́лочь 些事, ме́лкій 小さな) |
МѢН- | мѣни́ть 變へる |
МѢР- | мѣ́ра 方法 |
МѢС- 1 | мѣ́сяцъ 月 |
МѢС- 2 | мѣси́ть こねる, мѣша́ть かき混ぜる |
МѢСТ- | мѣ́сто 場所 (! месть 復讐) |
МѢТ- | мѣ́та 印, мѣ́тить 狙ひをつける, замѣча́ть 氣附く, примѣча́ніе コメント, смѣ́та 見積もり (! мета́ть 投げる, предме́т 事項) |
МѢХ- | мѣхъ 毛皮 |
Н | (4語根) |
НѢГ- | нѣ́га 安逸, нѣ́жный 優しい |
НѢДР- | нѣ́дра 地中 |
НѢМ- | нѣмо́й 啞, нѣ́мец ドイツ人 |
НѢТ- | нѣтъ 否(не е(сть) ту の縮約), отнѣка́ться 同意しない(宗教的意味で) |
О | (1語根) |
ОРѢХ- | орѣ́хъ 胡桃 |
П | (12語根) |
ПЛѢН- | плѣнъ 捕虜 (! плёнка 膜) |
ПЛѢС- | плѣ́сень きのこ (! плести́ 編み込む) |
ПЛѢШ- | плѣшь 禿, Плѣха́нов プレハーノフ |
ПОЛѢН- | полѣ́но 丸太 |
ПРѢ- | прѣть 蒸れる, прѣ́ніе 蒸れること (! пре́нія 論戰) |
ПРѢС- | прѣ́сный 無味 |
ПѢ- | пѣ́сня 歌, пѣту́х 雄鷄 (! пе́репелъ 鶉) |
ПѢГ- | пѣ́гій 葦毛の |
ПѢН- | пѣ́на 泡 |
ПѢНЯЗ- | пѣ́нязь ペニヒ(ドイツの舊補助貨幣單位) |
ПѢСТ- | пѣ́стовать 育兒をする |
ПѢХ- | пѣхо́та 步兵, пѣшко́мъ 步いて |
Р | (11語根) |
РѢ- | рѣ́ять はためく |
РѢД- | рѣ́дкiй 稀 |
РѢДЬ- | рѣ́дька 大根 |
РѢЗ- | рѣзать 切る(完 рѣ́зать, 不 рѣза́ть), рѣ́зкій 急な |
РѢК- 1 | рѣка́ 川 |
РѢК- 2 | рѣчь 話, нарѣ́чіе 副詞 (! 同語源の動詞は е; изре́чь のたまふ, изрече́ніе 格言) |
РѢП- | рѣ́па 蕪 |
РѢС- | рѣсни́ца まつ毛 |
РѢТ- | обрѣсти́ 得る, встрѣ́тить 逢ふ, встрѣ́ча 出逢ひ (! брести́ のろのろ步く) |
РѢХ- | прорѣ́ха ほころび, рѣшето́ 篩 (! ре́шка 硬貨の裏面) |
РѢШ- | рѣши́ть 決める |
С | (23語根) |
СВИРѢП- | свирѣ́пый 殘忍な |
СВѢЖ- | свѣ́жiй 新鮮な |
СВѢТ- | свѣтъ 光、世界, Свѣтла́на 人名 |
СЛѢД- | слѣдъ 跡 |
СЛѢП- | слѣпо́й 盲目の |
СНѢГ- | снѣгъ 雪 |
СМѢ- | смѣть 思ひ切ってする, смѣхъ 笑ひ, смѣя́ться 笑ふ |
СПѢ- | спѣть 熟する, спѣ́лый 熟した, успѣ́хъ 成功 |
СТРѢЛ- | стрѣла́ 矢 |
СТРѢХ- | стрѣха́ 軒 |
СТѢН- | стѣна́ 壁 |
СУСѢК- | сусѣ́къ 穀物壺 |
СѢ- | сѣ́мя 種 сѣ́ять 播く (! семья́ 家族) |
СѢВЕР- | сѣ́веръ 北 |
СѢД- 1 | сѣсть 座る, бесѣ́да 會話, сосѣ́д 隣人 (! село́ 村) |
СѢД- 2 | сѣдо́й 白髪の |
СѢК- | сѣчь 切る, насѣко́мое 昆蟲 |
СѢН- 1 | сѣ́но 乾草 |
СѢН- 2 | сѣнь 陰, сѣ́ни 玄關 (! о́сень 秋) |
СѢР- | сѣ́рый 灰色, сѣ́ра 硫黄 |
СѢТ- 1 | сѣть 網 |
СѢТ- 2 | посѣти́ть 訪れる |
СѢТ- 3 | сѣ́товать 愚癡をこぼす |
Т | (8語根) |
ТЕЛѢГ- | телѣ́га 荷車 |
ТЛѢ- | тлѣть 腐る, тлѣ́ніе 腐敗, тлѣ́нный はかない |
ТѢ- | затѣ́я 企て |
ТѢЛ- | тѣ́ло 體 |
ТѢН- | тѣнь 影 |
ТѢС- | тѣ́сный 狹い, стѣсня́ться 遠慮する |
ТѢСТ- | тѣ́сто パン生地 |
ТѢХ- | потѣ́ха 娯樂 |
Х | (3語根) |
ХЛѢБ- | хлѣбъ パン (! хлеба́ть 食らふ, похлёбка 湯) |
ХЛѢВ- | хлѣвъ 畜舎 |
ХРѢН- | хрѣнъ わさび |
Ц | (6語根) |
ЦВѢТ- | цвѣтъ 色, цвѣто́къ 花 |
ЦѢВ- | цѣ́вка 細管, цѣвни́ца 笙 |
ЦѢД- | цѣди́ть 濾す |
ЦѢЛ- | цѣ́лый 全體, цѣль 目的, цѣлова́ть 接吻する |
ЦѢН- | цѣна́ 値段 |
ЦѢП- | цѣпь 鎖 |
借用語根
以下の借用語とその派生語に Ѣ が使はれました。
-
人名
- ギリシャ語系: Алексѣ́й (Ἀλέξιος)
- ラテン語系: Сергѣ́й (Sergius)
- ヘブライ語系: Елисѣ́й (אֱלִישַׁע), Еремѣ́й (יִרְמְיָה), Матвѣ́й (מַתַּי)
- 北歐系: Глѣбъ (Guðleifr), Рогнѣ́да (Ragnheidr)
- 民族名: печенѣ́ги ペチェネグ人, нѣ́мцы ドイツ人, самоѣ́ды ネネツ人, индѣ́йцы 北米インディアン
-
地名
- Вѣ́на, Днѣпръ, Днѣстръ, Нѣ́манъ, Онѣ́га
- ポーランド語系: Кѣ́льцы (Kielce), Гнѣ́зно (Gniezno) など
- 月名: апрѣ́ль 四月
- 18世紀までは外來語の音寫に ѣ が利用されることがありましたが、ほとんどはその後 ье に改められました(пѣ́са → пье́са: フランス語 pièce 芝居)。例外は вѣ́еръ(オランダ語 waaier 扇)で、これは вѣять 風が吹く との符合によるものです。
覺え歌
Ѣ で綴る語彙の暗記はロシア人にとっても舊正書法最大の難關でした。暗記を助けるための詩が教育に用ゐられました。
【覺え歌その一】ホレイ4脚
Бѣ́лый, блѣ́дный, бѣ́дный бѣсъ | 白い、青白い哀れな惡魔が |
Убѣжа́лъ голо́дный въ лѣсъ. | 腹をすかせて森に驅けこんだ |
Лѣ́шимъ по́ лѣсу онъ бѣ́галъ, | ゴブリンみたいに森を走って |
Рѣ́дькой съ хрѣ́номъ пообѣ́далъ | 大根とワサビを晝食に |
И за го́рькій тотъ обѣ́дъ | この苦々しい晝食をとりながら |
Далъ обѣ́тъ надѣ́лать бѣдъ. | 惡事をはたらく誓ひを立てた |
Вѣ́дай, братъ, что клѣть и клѣ́тка, | 覺えよう、兄弟、檻とか籠とか |
Рѣшето́, рѣшётка, сѣ́тка, | 篩に鐵格子に網に |
Вѣ́жа и желѣ́зо съ ять, — | 天幕やら鐵やらは ѣ で |
Такъ и на́добно писа́ть. | 綴らなければならないと |
На́ши вѣ́ки и рѣсни́цы | 僕らのまぶたとまつげとは |
Защища́ютъ глазъ зѣни́цы, | 目のひとみを守ってる |
Вѣ́ки жму́ритъ цѣ́лый вѣкъ | 人は誰でも一生の間 |
Но́чью ка́ждый человѣ́къ… | まぶたを夜には閉じるもの |
Вѣ́теръ вѣ́тки полома́лъ, | 風が小枝をへし折ると |
Нѣ́мецъ вѣ́ники связа́лъ, | ドイツ人が箒をこしらへた |
Свѣ́силъ вѣ́рно при промѣ́нѣ, | 取引に備へてきちんと吊るし |
За двѣ гри́вны про́далъ въ Вѣ́нѣ. | ヴィーンで2グリヴナで賣り出した |
Днѣпръ и Днѣстръ, какъ всѣмъ извѣ́стно, | 皆樣おなじみのドニエプルにドニエストル |
Двѣ рѣки́ въ сосѣ́дствѣ тѣ́сномъ, | ご近所同士の二本の川 |
Дѣ́литъ о́бласти ихъ Бугъ, | 彼らの地域をブーク川が分けて |
Рѣ́жетъ съ сѣ́вера на югъ. | 北から南に真っ二つ |
Кто тамъ гнѣ́вно свирѣпѣ́етъ? | 怒り狂って暴れてるのは誰? |
Крѣ́пко сѣ́товать такъ смѣ́етъ? | そんなに文句をまくしたててるのは? |
На́до ми́рно споръ рѣши́ть | 爭ひは平和に解決しよう |
И другъ дру́га убѣди́ть… | 互ひに言葉で主張して |
Пти́чьи гнѣ̈зда грѣхъ зори́ть, | 罪作りですよ、鳥の巢を壞したり |
Грѣхъ напра́сно хлѣбъ сори́ть, | パンを無駄にしたり |
Надъ калѣ́кой грѣхъ смѣя́ться, | 片輪者を笑ったり |
Надъ увѣ́чнымъ издѣва́ться… | 弄りの種にしたりするのは |
【覺え歌その二】前三連はホレイ4脚、後二連はヤンブ4脚
途中文意をなしてをらず、單語を韻律に合ふ樣に羅列しただけの部分があります。
Замѣшу́ посѣ́въ въ мѣри́ло, | 種まきを標準通りにすませたら |
Ѣ́ду грѣхъ исповѣда́ть. | 罪を懺悔しにまゐります |
Мѣдь, желѣ́зо всѣхъ плѣни́ло, | みんな銅と鐵のとりこになって |
Днѣпръ, Днѣстръ посѣща́ть. | ドニエプルとドニエストルを訪れる |
Пріобрѣ́лъ, разцвѣ̈лъ, загнѣ́дка, | 獲得した、咲いた、ペチカのくぼみ |
Вѣсъ, апрѣ́ль, успѣ́хъ, сѣдло́, | 重みに四月に成功に鞍 |
Зрѣть, прорѣ́ха, вѣ́ха, рѣ́дко, | 熟す、ほつれ、一里塚、たまに |
Мѣ́тко, вѣстова́ть, сосѣ́дка | うまく云ふ、齋戒する、近所の人 |
Крѣ́покъ, спѣлъ, орѣ́хъ зѣло́… | 丈夫な、熟した、胡桃はとても…… |
Бѣ́сы, сѣ́ни, цѣ́пи, вѣ́жа, | 惡魔、玄關、鎖、天幕、 |
Лѣ́вый, нѣ́кій, прѣ́сный, цѣлъ. | 左の、何らかの、薄味の、全くの |
Дѣ́ти-свѣтъ! Болѣ́йте рѣ́же! | 子供のみんな! 病氣にならぬ樣に! |
Печенѣ́гъ плѣня́ть умѣ́лъ… | ペチェネグ人は誘拐が得意 |
Разъ бѣ́лка бѣ́са побѣди́ла | 栗鼠が惡魔を負かして |
И съ тѣмъ изъ плѣ́на отпусти́ла, | 虜囚の身から自由になったら |
Чтобъ онъ ей отыска́лъ орѣ́хъ. | 惡魔に胡桃を探させる |
Но дѣ́ло бы́ло то въ апрѣ́лѣ, | ところが時はまだ四月 |
Въ лѣсу́ орѣ́хи не созрѣ́ли. | 森の胡桃はまだ未熟 |
Съ Днѣпра́, съ Днѣстра́ ли нѣ́кто Глѣбъ, | ドニエプルだかドニエストルだかから來たグレープ某が |
Жилъ въ богадѣ́льнѣ дѣдъ-калѣ́ка, | 廢人になって救貧院に入ってた |
Не человѣ́къ, полъ-человѣ́ка… | 人間さまでない、半人間だ |
Онъ былъ и глухъ, и нѣмъ, и слѣпъ, | 耳も聞こえず口もきけずに目も見えず |
Ѣлъ то́лько рѣ́пу, хрѣнъ и рѣ́дьку. | 蕪とワサビと大根ばかり食べてゐた |
副詞語末の -ѣ / -е
派生語でない副詞・前置詞の多くは ѣ で綴ります。гдѣ どこ, здѣсь ここ, нынѣ 今, послѣ 後で, кромѣ 他に, развѣ もしや など。よって上記とは逆に е で綴る單語を覺えた方が早く、そのための詩、といふか語呂良く羅列したものがありました。
ホレイ4脚
Ны́нче во́все вообще́, | 昨今全く全體的に |
Е́же, пре́жде и уже́, | 前以てすでにさうなる樣に |
Всу́е е́ле вотще́ вдво́е, | 倍の苦勞をしても無駄に終はり |
Вту́не кра́йне да́же втро́е. | 三倍でさへもさっぱり駄目だ |
この詩のほか、ещё まだ, между 間に, ина́че さもなくば などと、比較級(例:бо́льше より多く, ху́же より惡く)が ѣ を使はない例外です。
現正書法で同綴となるもの
正書法改革によって綴り分けられてゐた同音異義語が同綴異義語になってしまひました。すでに出て來たものもありますがここでまとめます。
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міръ 世界、農村共同體 — миръ 平和
- 單數生格 мі́ра ― ми́ра ― мѵ́ра (< мѵ́ро 聖油)
- 中性軟變化の單數主對格と前置格 куда́? — въ мо́ре; но гдѣ? — въ мо́рѣ.
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動名詞
- прѣ́ніе (< прѣть) 爛熟 — пре́ніе 論戰(後者は通常は複數 пре́нія)
- обрусѣ́ніе (< обрусѣ́ть) 自發的ロシア化 — обрусе́ніе (< обруси́ть) 強制的ロシア化
- ѣсть 食べる(不定詞)— есть である(現在三人稱單數)
- нѣ́жить (< нѣ́жный) かはいがる — не́жить (< не-жить) アンデッド
- ви́дѣнъ 見られた(ви́дѣть の受動形動詞過去短語尾男性)— ви́денъ 目に見える(ви́дный の短語尾男性)
- лѣвъ 左(лѣ́вый の短語尾男性)― левъ 獅子
- лѣс 森 の複數主格 лѣса́ — леса́ 釣糸、足場
- вѣ́но 結納金 の單數生格 вѣ́на — ве́на 靜脈
- тѣ́сто パン生地 の複數生格 тѣстъ — тестъ テスト
- лѣчу́ (< лѣчи́ть) 私は治療する — лечу́ (летѣ́ть) 私は飛ぶ
以上は元から同音ではあったといふことで、言文一致の原則からすると仕方がないとも言へます。しかしロシア語ではアクセントを書かないので、アクセントが異なり同音ではないものも卷き添えで同綴になってしまひました。
- са́мый の男中性生格 са́маго — самъ の男中性生格 самого́
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動名詞
- вѣ́дѣніе (< 教會スラヴ語 вѣ́дѣти) 管轄、知識 — веде́ніе (вести́) 經營、遂行
- свѣ́дѣніе (< 教會スラヴ語 съвѣ́дѣти) 情報、報道、データ — сведе́нiе (< свести) 縮小
- желѣ́зо 鐵 の單數生格 желѣ́за — железа́ 腺
- калѣ́ка 不具者 の複數生格 кале́к — ка́лька トレーシングペーパー の複數生格 ка́лек
- мѣ́чу (мѣ́тить) 私は狙ふ — мечу́ (мета́ть) 私は投げる
さらには Ё の字上符を省略しがちといふ惡習により被害は擴大します。
- 疑問代名詞無生物前置格 чёмь — 造格 чѣмъ
- 全稱代詞中性 всё — 複數 всѣ
- мѣдъ 銅 — мёдъ 蜜
- жена́ 妻 の單數生格 жены́ — 複數主格 жо́ны (現 жёны)
- лѣ́то/год の複數生格 лѣтъ — лётъ 飛行
まあいづれも重箱の隅ではありますし、どちらなのかは文脈から普通わかるので、慣れるしかないですね。
リンク
- Славеница: スラヴ諸語間の自動翻譯ツールで、新舊正書法間の變換にも對應してゐます。「ロシア語(ピョートル正書法)Русский (дореволюционная орфография)」が舊正書法です。ただし現正書法が舊正書法の複數の綴りに對應してゐる場合は出力結果に下線が出てタップ/クリックで選擇肢が出る樣になってゐます。
- Fundamento de Esperanto: 1905年に書かれたのでロシア語部分は舊正書法です。(といっても同樣に舊正書法で書かれたロシア文學の名作の數々は全て新正書法に改版されてゐるのですが。)