ロシア語のアクセント移動:動詞篇(現在組織)

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(記號の説明は名詞篇もしくは動詞綜論を參照してください。)

現在組織の語尾

第一活用 第二活用 第一活用 第二活用
人稱形 у! ю! 命令 и! и!
е!шь и!шь 副動詞現在 я! я!
е!т и!т 能動形動詞現在 у!щ я!щ
е!м и!м 受動形動詞現在 о!м и!м
е!те и!те  
у!т я!т  

 現在組織の語尾は全て語尾 ! です。覺えやすくて結構ですね。ただし語幹が \ のとき、單數1人稱以外の人稱形は常に、また能動形動詞現在は場合により、語尾 ! から語尾 / に交替します。すなはちはね返しルールが適用されます。

 命令形の и! は ь!, й! に弱化することがあります。ь! になるのは單子音の後でアクセントを獲得できなかった場合です(子音連續の後では弱化しません)。й! になるのは母音の後にきた場合です(アクセントに關係なく必ず起きます)。

 形動詞にはこの語尾の後ろにさらに形容詞の語尾 /ый, /ого, /ому... が續きます。

第二活用

 構造が單純なので第二活用から先にやります。

слы!ш 聞こえる кур\ 喫煙する °говор 話す
基底 表層 基底 表層 基底 表層
人稱形 слы!шу! слы́шу кур\ю! курю́ °говорю! говорю́
слы!ши!шь слы́шишь кур\/ишь ку́ришь °говори!шь говори́шь
слы!ши!т слы́шит кур\/ит ку́рит °говори!т говори́т
слы!ши!м слы́шим кур\/им ку́рим °говори!м говори́м
слы!ши!те слы́шите кур\/ите ку́рите °говори!те говори́те
слы!ша!т слы́шат кур\/ят ку́рят °говоря!т говоря́т
命令 слы!шь! слы́шь кур\и! кури́ °говори! говори́
副現 слы!ша! слы́ша кур\я! куря́ °говоря! говоря́
能形現 слы!ша!щ/ий слы́шащий кур\я!щ/ий куря́щий °говоря!щ/ий говоря́щий
受形現 слы!ши!м/ый слы́шимый кур\и!м/ый кури́мый °говори!м/ый говори́мый

 語幹 ! は語幹固定アクセントです。語幹 \ の人稱形でははね返しが起きて移動アクセントになってゐます。語幹 ° は語尾固定アクセントです。

 色々と例外パターンのあった名詞篇とは異なり、動詞現在のアクセント型はこの3通りだけです。語幹の屬性(! \ °)とアクセント型(語幹固定アクセント・移動アクセント・語尾固定アクセント)とは一對一對應してゐます。

 なのである動詞の現在語幹の屬性がどれなのかは、單數1人稱と2人稱の形だけ見れば知ることができます。

 第二活用の語幹 \ で命令複數2人稱は кур\и!те (кури́те) の樣になり、現在複數2人稱とアクセントのみで區別されます。語幹 ° では命令・現在複數2人稱は同形です。

第一活用(子音幹現在)

 第一活用はいくつかの場合に分かれます。まづ現在語幹が子音で終はるものは第二活用とほぼ同じです。なほ子音交替が起きたり起きなかったりしますがここではアクセントのみ論じます。

ре!з 切る иск\ 探す °крад 盜む
基底 表層 基底 表層 基底 表層
人稱形 ре!жу! ре́жу ищ\у! ищу́ °краду! краду́
ре!же!шь ре́жешь ищ\/ешь и́щешь °краде!шь крадёшь
ре!же!т ре́жет ищ\/ет и́щет °краде!т крадёт
ре!же!м ре́жем ищ\/ем и́щем °краде!м крадём
ре!же!те ре́жете ищ\/ете и́щете °краде!те крадёте
ре!жу!т ре́жут ищ\/ут и́щут °краду!т краду́т
命令 ре!жь! ре́жь ищ\и! ищи́ °кради! кради́
副現 ре!жа! ре́жа ищ\а! ища́ °крадя! крадя́
能形現 ре!жу!щ/ий ре́жущий ищ\/ущ/ий и́щущий °краду!щ/ий краду́щий
受形現 ре!же!м/ый ре́жемый °крадо!м/ый крадо́мый

 иска́ть の受動形動詞現在が空欄なのは存在しないためです。例示に使ふには微妙ですが、對象語の數が少なくその中で受動形動詞現在を持ってゐる動詞は現時點で見附けられてゐません。(語根子音幹現在の第一活用動詞はほとんどが語幹 ° です。)

 能動形動詞現在の и́щущий でははね返しが起きてゐます。第一活用の能動形動詞現在では мог\ できる を除く全ての語幹 \ で語尾が ! から / に交替します。(第二活用は語によります。)

 その他の點は第二活用と同じなので説明の繰り返しは省きます。


 現在語幹が子音で終はる動詞には派生接辭 °н у! がついて -нуть で終はるものもあります。多くは動作の一回性を表す完了體動詞(一回體)、一部は變化を表す不完了體動詞です(下例の мёрзнуть は不完了體)。°н までが現在語幹です。アクセントは接尾辭がない動詞と同じです。

ме!рз°н 凍える вз гляд\°н 一瞥する °мах°н 振り回す
基底 表層 基底 表層 基底 表層
人稱形 ме!рз°ну! мёрзну вз гля\°ну! взгляну́ °мах°ну! махну́
ме!рз°не!шь мёрзнешь вз гля\°н/е!шь взгля́нешь °мах°не!шь махнёшь
ме!рз°не!т мёрзнет вз гля\°н/е!т взгля́нет °мах°не!т махнёт
ме!рз°не!м мёрзнем вз гля\°н/е!м взгля́нем °мах°не!м махнём
ме!рз°не!те мёрзнете вз гля\°н/е!те взгля́нете °мах°не!те махнёте
ме!рз°ну!т мёрзнут вз гля\°н/у!т взгля́нут °мах°ну!т махну́т
命令 ме!рз°ни! мёрзни вз гля\°ни! взгляни́ °мах°ни! махни́
副現  
能形現 ме!рз°ну!щ/ий мёрзнущий  
受形現  

 語根 \ では °н を挾んではね返しが起きてゐます。(вздляну́ть の本源動詞 гля́нуть 一度見る は гля!д で語幹固定アクセントです。)

 自動詞が多いこともあり受動形動詞があるものは見あたりません。瞬時性が強いせゐか副動詞現在・能動形動詞現在もあまりない樣です。

第一活用(語根母音幹現在)

 少數の動詞は語根が母音で終はってゐます。この樣な動詞は語幹と語尾の間に й が入ります。實際の語形では語尾の у が ю に變はります。このタイプに語幹 \ はないので、全て語幹か語尾の固定アクセントです。

зна! 知る °плю 唾を吐き掛ける
基底 表層 基底 表層
人稱形 зна!ю! зна́ю °плюю! плюю́
зна!е!шь зна́ешь °плюе!шь плюёшь
зна!е!т зна́ет °плюе!т плюёт
зна!е!м зна́ем °плюе!м плюём
зна!е!те зна́ете °плюе!те плюёте
зна!ю!т зна́ют °плюю!т плюю́т
命令 зна!й! зна́й °плюй! плю́й
副現 зна!я! зна́я °плюя! плюя́
能形現 зна!ю!щ/ий зна́ющий °плюю!щ/ий плюю́щий
受形現 зна!е!м/ый зна́емый  

 плева́ть の受動形動詞現在はやはり空欄です。命令形をよく見ると語尾固定アクセントなので *плюи́ が期待されるところ、母音の後なので語尾が -й に弱化してゐます。よって語幹の ю に假アクセントが落ちます。

 °да (дава́ть), °зна (-знава́ть) , °ста (-става́ть) の3語根から派生する不完了體動詞では命令形・副動詞現在・受動形動詞現在の3形を、過去語幹 °да ва!!, °зна ва!!, °ста ва!! から作ります。アクセントは ва!! の位置に固定です。

°да 與へる у °зна 見覺えがある
基底 表層 基底 表層
人稱形 °даю! даю́ у °знаю! узнаю́
°дае!шь даёшь у °знае!шь узнаёшь
°дае!т даёт у °знае!т узнаёт
°дае!м даём у °знае!м узнаём
°дае!те даёте у °знае!те узнаёте
°даю!т даю́т у °знаю!т узнаю́т
命令 °дава!!й! дава́й у °знава!!й! узнава́й
副現 °дава!!я! дава́я у °знава!!я! узнава́я
能形現 °даю!щ/ий даю́щий у °знаю!щ/ий узнаю́щий
受形現 °дава!!е!м/ый дава́емый у °знава!!е!м/ый узнава́емый

第一活用(接辭母音幹現在)

де!л а! する игр\ а! 遊ぶ °чит а! 讀む
基底 表層 基底 表層 基底 表層
人稱形 де!лаю! де́лаю игр\а!ю! игра́ю °чита!ю! чита́ю
де!лае!шь де́лаешь игр\а!е!шь игра́ешь °чита!е!шь чита́ешь
де!лае!т де́лает игр\а!е!т игра́ет °чита!е!т чита́ет
де!лае!м де́лаем игр\а!е!м игра́ем °чита!е!м чита́ем
де!лае!те де́лаете игр\а!е!те игра́ете °чита!е!те чита́ете
де!лаю!т де́лают игр\а!ю!т игра́ют °чита!ю!т чита́ют
命令 де!лай! де́лай игр\а!й! игра́й °чита!й! чита́й
副現 де!лая! де́лая игр\а!я! игра́я °чита!я! чита́я
能形現 де!лаю!щ/ий де́лающий игр\а!ю!щ/ий игра́ющий °чита!ю!щ/ий чита́ющий
受形現 де!лае!м/ый де́лаемый игр\а!е!м/ый игра́емый °чита!е!м/ый чита́емый

 多くの動詞の現在語幹は語根だけでなく、その後ろに母音で終はる派生接辭がくっついてできてゐます。ここに擧げたのは а! ですが е! や у! のこともあります。

 語幹が母音で終はってゐますので、前節と同じく й が插入され、綴り上は語尾の у が ю になります。

 完了體から接尾辭 /ыва, /(в)а などにより派生される不完了體動詞もすべてこのグループに含まれ、その數は膨大です。ロシア語を學び始める時に最初に習ふ活用はこれだと思ひますが、それはこのグループこそが動詞の中で最大勢力だからです。「接辭母音幹の第一活用」と毎回書くのはわずらはしいので以下「第一正則活用」あるいは單に「正則活用」と呼ぶことにします。

 そして氣附いた方も居るでせうが、このグループでは語根が ! であらうが \ であらうが ° であらうが、必ず語幹の終はりまでに早いもの勝ちルールの適用があり、必ず語幹固定アクセントになります。つまり語根の屬性を覺える必要はありません。語幹をわざわざ語根と接辭に分解せず、де!ла, игра!, чита! と書いても同じことです。第一正則活用であることが分かれば自動的に語幹固定アクセントと分かります。

(一應語根の屬性は派生語のアクセントを覺える時にちょっと役立つ可能性がありますが、派生語の方で屬性交替を起こしたりもするのでまあ實益は無いと言へるでせう。現に игра́ть の元の名詞 игра́ は語幹 игр\ ですが、де́лать の元の名詞 де́ло は語幹 °дел です。)


 派生接辭が у! なのはいはゆる -овать 動詞です。

уча!ств у! 參加する °мобил из\\ у! 動員する °рис у! 描く
基底 表層 基底 表層 基底 表層
人稱形 уча!ству!ю! уча́ствую °мобилиз\\у!ю! мобилизу́ю °рису!ю! рису́ю
уча!ству!е!шь уча́ствуешь °мобилиз\\у!е!шь мобилизу́ешь °рису!е!шь рису́ешь
уча!ству!е!т уча́ствует °мобилиз\\у!е!т мобилизу́ет °рису!е!т рису́ет
уча!ству!е!м уча́ствуем °мобилиз\\у!е!м мобилизу́ем °рису!е!м рису́ем
уча!ству!е!те уча́ствуете °мобилиз\\у!е!те мобилизу́ете °рису!е!те рису́ете
уча!ству!ю!т уча́ствуют °мобилиз\\у!ю!т мобилизу́ют °рису!ю!т рису́ют
命令 уча!ству!й! уча́ствуй °мобилиз\\у!й! мобилизу́й °рису!й! рису́й
副現 уча!ству!я! уча́ствуя °мобилиз\\у!я! мобилизу́я °рису!я! рису́я
能形現 уча!ству!ю!щ/ий уча́ствующий °мобилиз\\у!ю!щ/ий мобилизу́ющий °рису!ю!щ/ий русу́ющий
受形現 °мобилиз\\у!е!м/ый мобилизу́емый °рису!е!м/ый русу́емый

 やはり у! より前の部分が ! ならその位置に、\ か ° なら у! にアクセントがあり、すべて語幹固定アクセントです。

混合活用

 бежа́ть, хоте́ть の2語(およびその派生動詞)は第一活用と第二活用が混ざった變化をします。бежать では單數1人稱と複數3人稱が第一活用で殘りが第二活用、хотеть では單數が第一活用で複數が第二活用です。アクセントだけ見れば бежать は規則的ですが、хотеть では語幹のアクセント型が交替します。

°бег 走る °хот, хот\ 欲する
基底 表層 基底 表層
人稱形 °бегу! бегу́ хоч\у! хочу́
°бежи!шь бежи́шь хоч\/ешь хо́чешь
°бежи!т бежи́т хоч\/ет хо́чет
°бежи!м бежи́м °хоти!м хоти́м
°бежи!те бежи́те °хоти!те хоти́те
°бегу!т бегу́т °хотя!т хотя́т
命令 °беги! беги́ °хоти! хоти́
副現 °хотя! хотя́
能形現 °бегу!щ/ий бегу́щий °хотя!щ/ий хотя́щий
受形現 °бежи!м/ый бежи́мый  

 なほ °бег は定向動詞です。語根が ! に變はって派生接辭のついた不定向動詞 бе!га! (бе́гать) は第一正則活用です。

不規則活用

 быть の現在 есть(および擬古的に用ゐる複數 суть)は人稱形の枠組みの外にあります。未來の人稱形は語幹 бу!д により規則的です。副動詞現在は бу!ду!чи と不規則ですが語幹 ! なのさへ把握してゐればアクセントで迷ふことはありません。

「食べる」の方の есть と дать の2語(およびその派生動詞)は特殊な活用をします。單數で語尾の前の д が脱落したり с に變はったりしますし、命令形は覺えてくださいとしか云ひ樣のない不規則中の不規則です。しかしアクセント的には語幹 ° の規則通りです。

°ед 食べる °дад 與へる
基底 表層 基底 表層
人稱形 °едм! е́м °дадм! да́м
°едшь! е́шь °дадшь! да́шь
°едт! е́ст °дадт! да́ст
°еди!м еди́м °дади!м дади́м
°еди!те еди́те °дади!те дади́те
°едя!т едя́т °даду!т даду́т
命令 °едшь! е́шь °дай! да́й
副現 °едя! едя́  
能形現 °едя!щ/ий едя́щий  
受形現 °едо!м/ый едо́мый  

その他の例外

① ля!г 横になるの命令形は ля́г です。

②第二活用のうち以下の5語では副動詞現在の語尾 я! が /я に交替し、語幹にアクセントが落ちます。

見やる 座る 立つ 判斷する 横たはってゐる
語幹 °гляд °сид °сто °суд °леж
副現(基底) °гляд/я °сид/я °сто/я °суд/я °леж/а
副現(表層) гля́дя си́дя сто́я су́дя лёжа

 су́дя ~ судя́ には搖れがあります。

③ -ти に終はる完了體動詞(すなはち本源動詞 -ти に接頭辭をつけて派生したもの)では、副動詞現在に相當する形を意味上の副動詞過去として使ひます。アクセント上は副動詞現在そのもので例外的なところはありません。

接頭辭と -ся の扱ひ

 動詞の接頭辭は基本的にアクセントをめぐるルールの外にあります。アクセントが決まった上で、後ろには何も影響を與へず接頭辭が加はります。

 例外は完了體動詞を派生する вы! で、現在組織・過去組織にわたり全ての形で вы! にアクセントを持ちます。なほこれによってアクセントを失った命令形の и! は弱化せずそのままです。

 この完了體動詞から更に /ыва などにより派生した不完了體動詞(第一正則活用)では原則に戻り、他の接頭辭と同じくアクセントに影響しません。

вы!°говор 聲に出す(完) вы °говар/ива 聲に出す(不)
基底 表層 基底 表層
人稱形 вы!°говорю! вы́говорю вы °говар/иваю! выгова́риваю
вы!°говори!шь вы́говоришь вы °говар/ивае!шь выгова́риваешь
вы!°говори!т вы́говорит вы °говар/ивае!т выгова́ривает
вы!°говори!м вы́говорим вы °говар/ивае!м выгова́риваем
вы!°говори!те вы́говорите вы °говар/ивае!те выгова́риваете
вы!°говоря!т вы́говорят вы °говар/иваю!т выгова́риваю́т
命令 вы!°говори! вы́говори вы °говар/ивай! выгова́ривай
副現 вы °говар/ивая! выгова́ривая
能形現 вы °говар/иваю!щ/ий выгова́ривающий
受形現 вы °говар/ивае!м/ый выгова́риваемый

 不完了體では唯一 вы!°гляд (вы́глядеть) のみが完了體であるかの樣に接頭辭にアクセントを持ちます。


 再歸動詞を作る -ся(母音の後では -сь。ただし形動詞では -ся のまま)も原則としてアクセントに影響せず、-ся 動詞と元動詞のアクセントは一致するのが普通です。ただし例外が2語あります。

 ложи́ть 横たへる(本源動詞としては класть を使ひ、положи́ть など派生にのみ用ゐる)は лож\ ですが、ложи́ться 横になる は °лож を現在語幹とします。

 садить 座らせる(сажа́ть の俗語)は сад\ ですが、сади́ться 座る は °сад を現在語幹とします。

不定詞と現在語幹の關係

 さて、これで現在語幹が判ってゐればここまでに述べたパターンのどれかにあてはめて活用させることができる樣になりました。しかし見出し語の不定詞から現在語幹を導き出すのがまた一苦勞です。これはインド・ヨーロッパ語族の主だった言語に共通する苦勞で、英語ですら現在形(英語ではこちらが原形)と過去形(と過去分詞)をセットで覺えなければなりません。

 そこで不定詞の語尾ごとに分類して現在語幹を示します。以下に擧げる語根はその派生完了體動詞にも原則として適用されます。()内の不定詞は接頭辭つきの動詞しかない場合はそれを示し、その後の意味もその動詞の意味を記します。混合活用と不規則活用はすでに言及したため省きます。

(1) -ИТЬ は以下の12語根を除き第二活用です。

-ИТЬ 第一活用語根
бь! (бить) 打つ бре! (брить) 剃る °гни (гнить) 朽ちる
шь! (шить) 縫ふ зи!жд (зи́ждиться) 基づく °жив (жить) 生きる
°вь (вить) 編む чи! (почи́ть) 休む °шиб (ошиби́ться) 間違ふ
°ль (лить) 流れる стель\ (стели́ть) 敷く  
°пь (пить) 飲む  

(2) -АТЬ, -ЯТЬ, -ЕТЬ の大多數は第一正則活用です。不定詞から -ть を取ったものが現在語幹であり、過去語幹も同じ形です。第二活用の語根は60語程度あり、新たに作られる借用語や派生不完了體動詞が第二活用になることはありません(-ить で第二活用の新語が作られることはあります)。

主な -АТЬ, -ЯТЬ, -ЕТЬ 第二活用語根
ви!д (ви́деть) 見る °молч (молча́ть) 默る °бой (боя́ться) 恐れる
слы!ш (слы́шать) 聞こえる °сид (сиде́ть) 坐る °лет (лете́ть) 飛ぶ
держ\ (держа́ть) 保つ °леж (лежа́ть) 横たはる °гляд (гляде́ть) 眺める
смотр\ (смотре́ть) 見る °стой (стоя́ть) 立つ °сп (спать) 眠る
гон\ (гнать) 追ふ °боль (боле́ть) 痛い  

(3) -АТЬ のうち以下は -ать を取って現在語幹を作ります。ほとんどは語幹 ° です。

-АТЬ 第一活用子音幹で變形を伴ふもの
°бер (брать) 取る ста!н (стать) なる
°дер (драть) 破る стель\ (стлать) 敷く (= стели́ть)
°жм (жать) 押す °шл (слать) 送る
°жн (жать) 刈り入れる °чн (нача́ть) 始める
°зов (звать) 呼ぶ  
その他の主な -АТЬ 第一活用子音幹
пла!к (пла́кать) 泣く бормот\ (бормота́ть) つぶやく каз\ (сказа́ть) 示す
ре!з (ре́зать) 切る вяз\ (вяза́ть) 束ねる пис\ (писа́ть) 書く
сы!п (сыпа́ть) 振りかける дрем\ (дрема́ть) まどろむ свист\ (свиста́ть) 口笛を吹く
иск\ (искать) 探す шепт\ (шепта́ть) ささやく

(4) -ЯТЬ 第一活用のうち正則活用でないものは以下の通りです。

(5) -ЕТЬ 第一活用のうち正則活用でないものは以下の通りです。

(6) -АВАТЬ(最後の а にアクセント)は第一活用ですが正則活用に屬さず、-вать を取って現在語幹を作ります。

(7) -ОВАТЬ, -ЕВАТЬ は第一活用ですが正則活用に屬さず、-о/евать を取って у/ю にかへて現在語幹を得ます。

°-у
°блю (блева́ть) 反吐を吐く °плю (плева́ть) 唾を吐く
°жу (жева́ть) もぐもぐ嚙む °сну (снова́ть) 行き交ふ
°клю (клева́ть) ついばむ °су (сова́ть) 突っ込む
°ку (кова́ть) 鍛へる

(8) -ЫТЬ に終はるものは2パターンに分かれます。どちらも第一活用です。

(9) -УТЬ に終はるもの

(10) -ОТЬ に終はる5語根は全て -оть を取って現在語幹を作り、全て語幹 \ です。

(11) -ТИ, -СТЬ, -ЗТЬ, -ЧЬ に終はるものは子音幹の第一活用です。ほとんどは語幹 ° です。不定詞から語幹末の子音を復元するのはちょっとしたコツが要ります。重要語が多く、かつ大した數でないので以下全てを列擧しますが、必ずしも覺える必要はありません。

11.1. ИДТИ́ の現在語幹はそのまま °ид, その派生動詞 -йти の現在語幹は -°йд です。

11.2. -ЗТИ, -ЗТЬ に終はるもの (4): 語幹末子音は з です。

11.3. -СТИ に終わるもの (14): 語幹末子音は с, т, д, б の4つの可能性があります。

-СТИ
с になるもの (3) т になるもの (6) д になるもの (3) б になるもの (2)
°нес (нести́) 持って運ぶ °мет (мести́) 掃く °блюд (блюсти́) 守る °греб (грести́) 漕ぐ
°пас (пасти́) 放牧する °обрет (обрести́) 見出す °бред (брести́) 骨折って步く °скреб (скрести́) ひっかく
°тряс (трясти́) 搖する °плет (плести́) 編む °вед (вести́) 率ゐる  
°свет (рассвести́) 夜が明ける  
°рост (расти́) 育つ  
°цвет (цвести́) 咲く  

11.4. -СТЬ に終はるもの (7): 語幹末子音は д, т, н の3通りです。

-СТЬ
д になるもの (5) т になるもの (1) н になるもの (1)
ся!д (сесть) 坐る чь!т (честь) 讀む °клян (клясть) 呪ふ
°клад (класть) 横たへる  
°крад (красть) 盜む  
°пад (пасть) 落ちる  
°пряд (прясть)紡ぐ  

11.5. -ЧЬ に終はるもの (16): 語幹末子音は к と г の2つの可能性があります。

-ЧЬ
к になるもの (7) г になるもの (9)  
°влек (влечь) °берег (бере́чь) 大切にする мог\ (мочь) できる
= °волок (воло́чь) ひきずる °небрег (пренебре́чь) 輕んずる ля!г (лечь) 横たはる
°пек (печь) 燒く °жьг (жечь) 燒く сти!г (дости́чь) 達する
°рек (предречь) 預言する °пряг (запря́чь) 馬具を繋ぐ  
°сек (сечь) 切る °стерег (стере́чь) 見張る  
°тек (течь) 流れる °стриг (стричь) 刈る  
°толок (толо́чь) くだく  

11.6. まとめ

 以上、不定詞が -母音-ть でない42語根のうちで語幹 ! は ле!з, ся!д, чь!т, ля!г, сти!г の5語根のみ、語幹 \ は мог\ の1語根のみで、殘りは語幹 ° です。

語幹 \ と語幹 ° の見分け方

 壓倒的多數の語幹は ! (派生による正則活用を含めて)であるため、\ と ° のものを覺えておきその他は !、とするのが得策です。なほ以下に該當するものは全て不定詞のアクセントが最終音節にあります。それ以外の場合は語幹 ! です。

【語幹 \ すなはち移動アクセントのもの】

  1. -а́ть を取って現在語幹を作る第一活用のうち、-а́ть の前に母音があるものの大部分(前節 (3) を參照)
  2. -ну́ть のうち、派生動詞でない5語根(前節の (9) を參照)と -гляну́ть の派生動詞(但し гля́нуть そのものは語幹 !)
  3. -оть で終はるもの全て
  4. -нять で終はるもののうち接頭辭が子音で終はるもの、および приня́ть(前節 (4) を參照)
  5. мочь できる(不定詞が -ть でないもののうちでは唯一)
  6. -ить に終はる第一活用のうち、стели́ть (= стлать) の1語根
  7. -ить に終はる第二活用のうち、運動の不定向動詞、その他比較的少數(下表)の語
  8. -ать, -еть に終はる第二活用のうち、гнать, держа́ть, дыша́ть, смотре́ть, терпе́ть の5語根
主な第二活用 -ить の語幹 \
буд\ (буди́ть) 起こす лож\ (положи́ть) 置く стонов\ (останови́ть) 止める
вал\ (вали́ть) 倒す люб\ (люби́ть) 好む ступ\ (ступи́ть) 步く
вар\ (вари́ть) 煮る мен\ (измени́ть) 變へる тороп\ (торопи́ть) 急ぐ
вод\ (води́ть) 導く нос\ (носи́ть) 持って運ぶ уч\ (учи́ть) 教へる
воз\ (вози́ть) 乘物で運ぶ плат\ (плати́ть) 拂ふ хвал\ (хвали́ть) ほめる
дар\ (дари́ть) 贈る получ\ (получи́ть) 受け取る хват\ (хвати́ть) 摑む/足りる
дел\ (дели́ть) 分ける прос\ (проси́ть) 頼む ход\ (ходи́ть) 步く
куп\ (купи́ть) 買ふ пуст\ (пусти́ть) 放す шуи\ (шути́ть) 冗談をいふ
кур\ (кури́ть) 喫煙する сад\ (сади́ть) 植ゑる яв\ (яви́ть) 示す
лов\ (лови́ть) 捕へる служ\ (служи́ть) 勤務する  

【語幹 ° すなはち語尾固定アクセントのもの】

  1. 第二活用 -и́ть, -а́ть, -е́ть の多く(上記語幹 \ の 7., 8. に該當しないもの)
  2. 第一活用 -ить のうち6語根(前節 (1) を參照)
  3. 第一活用 -ыть のうち2語根(前節 (8) を參照)
  4. -а́ть を取って現在語幹を作る第一活用のうち

    • -а́ть の前に母音がないもののほとんど(стлать を除く全て)
    • 他 °ор (ора́ть) 叫ぶ、°сос (соса́ть) 吸ふ (なほ орь\ (ора́ть) 耕す は移動アクセント)
  5. -ять のうち

    • взять
    • 母音で終はる接頭辭と -нять からなるもの(приня́ть を除く)
    • 他 °сме (смея́ться) 笑ふ, °вопи (вопия́ться) 神に向かひ嘆く
  6. 第一活用 -еть のうち -мере́ть, -пере́ть, петь, реве́ть の4語根
  7. -ава́ть 全て
  8. -овать, -евать のうち派生動詞でないもの(前節 (7) を參照)
  9. -ну́ть の大多數(上記語幹 \ の 2. に該當しないもの)
  10. -母音-ть でないもののほとんど(前節 (11) を參照)

    • -ти 全て
    • -зть, -сть のうち、лезть, сесть, честь 以外
    • -чь のうち、мочь, лечь, -стичь 以外

 語幹 \ を持つ第二活用動詞の一部はかつて語幹 ° でした。現在 ° から \ に移行する途中で搖れのあるものもあります。十九世紀以前の韻文を讀む際などに影響することがあります。また能動形動詞現在の語尾 я!щ が語幹 \ の後で /ящ に交替したりしなかったりするのは、元からの語幹 \ では交替し、かつて ° であった語幹では交替しないためです。